『紙の月』 - Fuwafuwa's memorandum

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『紙の月』

紙の月 DVD スタンダード・エディション紙の月 DVD スタンダード・エディション

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恐怖を感じたがっていたら勧められたので観たけど、ある主婦が若い情夫に溺れて銀行で横領を繰り返し転落する物語というより、元々そういう傾向のある人がなるべくしてそうなったという感じであんまり怖くはなかった。とは言え人に怖い映画をお勧めしてもらうということは、その人が何を一番恐れているのかがわかって面白いなと思った。

『嫌われ松子の一生』なんかもそうだけど、与えられる喜びと同じくらい、人に与える喜びというものもあって、『紙の月』では主人公の梨花を、エリートの夫を持ち生活に何不自由ない主婦に置くことでこの問題をより視聴者にとってリアルなものにしている。旦那は無関心で無神経なところもあるけど自分なりに主人公に優しく接しているが、根本的に主婦業の傍ら銀行の契約社員として働く梨花を見下しており、常に経済的・精神的・社会的自立を阻まれている梨花は生活に満たされなさを感じている。こうした環境は多分想像する以上に辛いものなのだろうなと思う。

若い情夫演じる池松がそりゃもう小悪魔的でクズでどんどん調子に乗ってくる感じですごくよかったのですが、終盤の隅さんと梨花が対峙するシーンがむちゃくちゃによすぎてすべて持っていかれてしまった。それまでなんか素っ気なくて厳しくて嫌味っぽいだけだった隅さんが、隠蔽しようとする支店にもめげず、女として出世も望めないような銀行において、自分の正義を貫くために淡々と梨花を追い詰めていくシーンめくちゃくちゃかっこよくないですか…?もう主人公隅さんでいいのでは…?

とは言えこの物語の主人公は、誰に感謝されるわけでも褒められるわけでもないのに、完全に善意のためだけに不正を暴く隅さんではなく、罪の意識などこれしきもない、ふてぶてしくもみっともない横領犯の方なのである。

梨花が偽物の善意の人で紙の月なら見返りを求めない隅さんは本物の善意の人と呼べる。私は隅さんのような善意はないし仕事ができるタイプでもないけれども共感する部分もある。与えられた環境や仕事において面白いと思ったことを追求するが、別にそれこそが自分の天職だとか一生やるべきことと感じているわけではない。自己肯定感が高いので人と自分を比較しくよくよすることはないが、目の前のことを淡々とやるだけの自分を酷くつまらない人間だとも感じる。

生活に満たされなさを感じているのは隅さんも同じで、でも梨花のようにとほうもない規模の横領をするほどのエネルギーを私利私欲のために使えない。そもそも自分が何を欲しているのかすらわからない。欲深いということは、自分が何を必要としているかを自分で理解しているということで、手段を選ばないということは自分の世界観が完成されているということでもある。隅さんは最後ちょっと梨花が好きになってたんだろうなとか色々想像した。欲深い人というのは本当にかっこいいんですよ。普通の人間はああはなれないので。

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