佐藤百合『経済大国インドネシア: 21世紀の成長条件』 - Fuwafuwa's memorandum

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佐藤百合『経済大国インドネシア: 21世紀の成長条件』

経済大国インドネシア - 21世紀の成長条件 (中公新書)経済大国インドネシア - 21世紀の成長条件 (中公新書)
佐藤 百合

中央公論新社 2011-12-17
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作者のインドネシアへの思いが前編から伝わってくるたいへん良い本。ただしインドネシア経済が今後重要になってくる根拠として一貫して人口オーナスの話しか出てこないのでやや肩透かしの感がある。日本が隆盛を誇っている最中に提唱されたアジア経済と労働人口を紐づけた理論はあまりに有名なので日経新聞でも読んでいる人なら大抵知っているのではないか。

人口オーナスによる経済の勃興の条件として本書では
1.人口抑制のための少子化が継続されること
2.労働人口を充分稼働させるだけの労働を用意する

1は勿論そうなのだが今の日本が直面しているように長きに渡り続く少子化は後の高齢化を招く諸刃の剣である。少子化による人口オーナスの稼働の例で中国の一人っ子政策が挙げられたが、そうなのか?一人っ子政策が始まった時期的に人口爆発を憂慮しての政策かと思っていたが、中国の歴史について疎いのでよくわからない(そもそも経済学で労働人口と経済との関連が重要視されるようになった時期とも前後すると思うが、要チェック)。

2.については現在と未来の労働人口の構成、国民の教養レベル、国際関係における想定賃金の高低を分析すればある程度定量的に先をみとおせそうだが、タイミング悪く今の自宅のネットの調子がすこぶる悪いので後の課題とする。

また著者は歳入を天然資源の輸出に依存することで国内の開発が停滞・衰退する「資源の呪い」や、資源輸出国が独裁国家と親和性が高い点を挙げ、インドネシアと言えば必ず言及されるような天然資源の豊富さについて触れない点などはいっそ不自然なまでである。

もちろんオランダ病も資源国のジニ係数の高さも極めて重要な点ではあるが、現在台頭してきている情報技術に代表される科学技術が基本的に複製可能であることを考えれば、決して複製され得ない天然資源の希少価値が今後も高まり続けることは自明である。天然資源は当然天然そのままよりも加工済みのものの方が高く輸出されるため、インドネシアの中で特に重要な開発は天然資源に関連した業界ではないかと私は思うのだが…。

読了後に著者の経歴を確認すると日本貿易振興機構アジア経済研究所地域研究センター次長ということなので、インドネシアに詳しいのは当然ながら、執筆に際してあまり中立的な立場の人では無かったのだろうなあとなんとなく想像。本書の中でかなりおもしろいのは、インドネシアにおける政治的な趨勢や民主化に伴う権力と資本の統合といった視点。いい本なんだけどなんだか違和感がすごかった。

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