2030年に存在する大学と閉鎖される大学を定量的に推定する - Fuwafuwa's memorandum

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2030年に存在する大学と閉鎖される大学を定量的に推定する

先日下記のような記事を書いたのですが

大学で社会学を学ぶということ

2030年に日本社会はどうなっているかを推定する: 大学で社会学を学ぶということ(実践編)

できると言ったからには実践しなければならないという謎の義務感が芽生えてしまったので
今回は2030年に存在する大学と閉鎖される大学を定量的に推定してみようと思いました。

なんだかセンシティブなテーマになってしまいましたが
12年後の進学率、18-22歳人口、各大学の学力偏差値などから推定しやすいだろうと思っただけで
特に深い意味はありません。

推定には下記の手順を踏みました。
1. 官庁統計から都道府県ごとの2030年における18-22歳人口を推定する
2. 都道府県ごとの2030年における大学進学率を推定する
3. webから各大学の現在の学生数を推定する
4. 全ての大学が2/3に縮小したと仮定し、1と2と3から2030年に何割の大学が閉鎖されるかを推定する
5. 18-22歳人口と大学進学率から2030年における都道府県ごとの大学在籍者数を推定する
6. webから各大学ごとの学力偏差値を推定する
7. 各都道府県ごとに大学を偏差値の高い順にソートし、大学在籍者数/累積大学在籍者数を地元志願者数とする
8. 6と7をz得点とし、これを平均したものを大学生存得点とする


3と6はweb上で公開されているデータを参照しましたが、機械的に収集しているので細かい部分で誤っているかもしれません。
学力偏差値は大体マナビジョンが測定しているものと似た感じになりました。
(マナビジョンを参考にしたのは、一部の進学塾と違ってより幅広い生徒の学力を測定しているだろうと思ったからです)

z得点は統計を使う人にはお馴染みだと思いますが、平均が0、標準偏差が±1となるよう数値を標準化したものです。
ただし今回は偏差値と地元志願者のz得点をそのまま平均しているので
最終的に計算される大学生存得点では標準偏差は1とはならずに0.8程度になっています。

地元志願者数を計算したのは、基本的には出生地と距離の近い大学を希望する人が多いだろうと考えたためです。

偏差値と地元志願者のz得点の合成は迷ったのですが
どちらも進学先大学を決定するのに甲乙つけがたい理由であり
最初からあまり問題を複雑にしすぎるのも良くないと思ったため、平均することにしました。

大学の生存得点を計算するにあたり、ここではいくつかの仮定をおきました。

まず4ですが、
2010年以降、政府はあからさまに大学の縮小・進学率の低減を進めていますので
(交付金や大学定員数の削減によって)
2030年には大学産業全体が2/3に縮小する(定員数を2/3にする)としました。

また、進学率も低下すると考えられます。
現在の50%弱という大学進学率は、バブル崩壊後の90年代以降に
政府が経済振興を目的として大学進学率をあげるために重点化と規制緩和を行った結果です。
そのため、今後この大学進学率は、90年代初頭より少し高い30%程度に押し下げられると予想しました。
この、全体の大学進学率30%という仮定から、都道府県ごとの大学進学率を
現在2018年の分散をもとに、2030年の値を推定しました。

産業規模自体が縮小すると言っても、少子化で、かつ大学進学率も著しく下がりますので
実際の大学生人口は2018年から2030年の間に凡そ54%程度まで減少すると推定できます。
そのため、大学側が教員の雇用や学生の定員数の削減を行なったとしても
現在の35%の大学は、希望する学生数の半数も確保することが困難になることと予想しています。

希望する学生数の半数も確保できないというのは大学の運営を維持することが著しく困難であると考え
ここでは2030年にも大学が存在するか否かの閾値をそのように決定しました。

生存得点の高い上位20大学を下記に記します。
上位5大学は医科大学が占めており、これは地方大学でかつ非常に高い学力偏差値を持っているからで
学部や学科を考慮せず前述のような生存得点の計算手順を取っているため、非常に高く得点が見積もられたものです。

この得点は少し高すぎるかも知れません。
しかし医科大学は今や極めて高い倍率であるため
大学の選択肢が少ない地方や国公立での生存蓋然性は依然高いものと考えられます。

その他旧帝国大学や、学力の高い大学の少ない地域の国公立などで生存率が高くなっています。

順位 国公立・私立 大学名 都道府県 偏差値Z得点 地域志願者Z得点 大学生存得点
1 私立大学 聖マリアンナ医科大学 神奈川県 1.943 16.789 9.366
2 私立大学 関西医科大学 大阪府 2.497 15.739 9.118
3 私立大学 兵庫医科大学 兵庫県 2.164 10.323 6.244
4 国公立大学 浜松医科大学 静岡県 1.721 3.837 2.779
5 国公立大学 岐阜薬科大学 岐阜県 2.164 3.146 2.655
6 国公立大学 帯広畜産大学 北海道 2.164 2.894 2.529
7 私立大学 川崎医科大学 岡山県 2.164 2.326 2.245
8 国公立大学 神戸市外国語大学 兵庫県 1.943 2.348 2.145
9 国公立大学 東京大学 東京都 3.124 0.969 2.046
10 国公立大学 香川大学 香川県 0.851 2.894 1.872
11 国公立大学 滋賀医科大学 滋賀県 1.721 1.686 1.703
12 私立大学 自治医科大学 栃木県 1.832 1.552 1.692
13 国公立大学 一橋大学 東京都 2.663 0.681 1.672
14 国公立大学 東京外国語大学 東京都 2.552 0.523 1.537
15 国公立大学 国際教養大学 秋田県 2.497 0.564 1.530
16 国公立大学 奈良県立医科大学 奈良県 1.610 1.438 1.524
17 国公立大学 名古屋大学 愛知県 2.131 0.777 1.454
18 国公立大学 横浜国立大学 神奈川県 1.677 1.230 1.453
19 国公立大学 京都大学 京都府 2.748 0.043 1.396
20 国公立大学 大阪大学 大阪府 2.294 0.467 1.380


下記に、今回の算出方法で生存得点が低かった下位20大学を示します。
全て私立大学が占めています。

特に下位四大学が全て東京都内の大学であることは興味深いですね。
これは、東京都内に大学を設立しすぎた結果、大学進学者よりも大学の定員数が上回ってしまったことに起因します。
愛知県や大阪府、福岡県なども、全体として進学者数と比較し大学の定員数が多すぎる傾向にあります。

これは、かつては大学進学とともに都会へ行くことそのものがインセンティブになっていた名残ではないかと考えています。
しかし、今後10年で18-22人口の親世代は、バブルの崩壊と就職氷河期を経験したロスジェネ世代で占められ
祖父母世代の資産額も下がり続けていることから
大学産業におけるトレンドは「国公立・地元の大学」となり
都内で増えすぎた(相対的に)学力偏差値の低い大学は、学生の確保が一段と厳しくなっていくのではないでしょうか。

また、沖縄県や山口県のような地方では、大学の数こそ多くはないものの
子供の数が少なく、かつ大学進学率も非常に低いため、こちらも学生の確保が難しいことと思います。

今回、web上で私が確認することができた全ての大学の生存得点を計算したのですが
2030年までの生存が難しい(希望学生の半分以下しか獲得できない)と考えられた大学は
ほとんど全てがマナビジョンを基準とし、学力偏差値が42以下の大学で占められていました。

ただし学力偏差値下位が全て生存困難な訳ではなく
地方で大学数が少なく、大学進学者数が定員数を上回っている場合には
多少学力偏差値が低くとも学生を確保できることと思います。

例えば、生存得点上位20位で見たように、どちらかというと稀な例ではあるのですが
香川県のように大学の定員数が大学進学者数を遥かに下回っている場合には
下位例とは反対に、仮に任意の大学の学力偏差値がそれほど高くない場合であっても
比較的容易に学生を獲得できるのではないでしょうか。
(香川大学自体は学力偏差値の高い大学の一つですが)
順位 国公立・私立 大学名 都道府県 偏差値Z得点 地域志願者Z得点 大学生存得点
710 私立大学 沖縄キリスト教学院大学 沖縄県 -1.381 -0.173 -0.777
711 私立大学 同朋大学 愛知県 -1.381 -0.176 -0.779
712 私立大学 名古屋経済大学 愛知県 -1.381 -0.177 -0.779
713 私立大学 東亜大学 山口県 -1.381 -0.177 -0.779
714 私立大学 北陸学院大学 石川県 -1.381 -0.177 -0.779
715 私立大学 名古屋芸術大学 愛知県 -1.381 -0.177 -0.779
716 私立大学 愛知みずほ大学 愛知県 -1.381 -0.177 -0.779
717 私立大学 愛知文教大学 愛知県 -1.381 -0.178 -0.779
718 私立大学 九州情報大学 福岡県 -1.381 -0.178 -0.779
719 私立大学 保健医療経営大学 福岡県 -1.381 -0.178 -0.780
720 私立大学 至誠館大学 山口県 -1.381 -0.179 -0.780
721 私立大学 日本経済大学 福岡県 -1.381 -0.181 -0.781
722 私立大学 東大阪大学 大阪府 -1.381 -0.182 -0.781
723 私立大学 金沢学院大学 石川県 -1.381 -0.182 -0.782
724 私立大学 稚内北星学園大学 北海道 -1.381 -0.187 -0.784
725 私立大学 種智院大学 京都府 -1.381 -0.211 -0.796
726 私立大学 こども教育宝仙大学 東京都 -1.381 -0.215 -0.798
727 私立大学 国立音楽大学 東京都 -1.381 -0.215 -0.798
728 私立大学 東京純心女子大学 東京都 -1.381 -0.215 -0.798
729 私立大学 高千穂大学 東京都 -1.381 -0.215 -0.798

最後に推定に用いた都道府県ごとの大学進学率、大学進学者数、最終的な生存大学数を掲載します。
2018年現在 2030年推定
都道府県 18-22歳人口 進学率 大学生数 大学数 18-22歳人口 進学率 大学生数 大学数 生存率
北海道 187,200 43.30% 81,058 37 172,800 22.21% 38,387 26 70.27%
青森県 39,200 43.60% 17,091 10 44,000 22.51% 9,907 4 40.00%
岩手県 38,400 44.20% 16,973 5 44,000 23.11% 10,171 3 60.00%
宮城県 98,400 49.50% 48,708 13 80,800 28.41% 22,959 6 46.15%
秋田県 24,800 44.60% 11,061 7 31,200 23.51% 7,337 5 71.43%
山形県 32,800 44.80% 14,694 6 39,200 23.71% 9,296 5 83.33%
福島県 59,200 45.70% 27,054 8 67,200 24.61% 16,541 4 50.00%
茨城県 104,000 50.50% 52,520 9 104,800 29.41% 30,827 5 55.56%
栃木県 66,400 52.00% 34,528 9 72,000 30.91% 22,259 5 55.56%
群馬県 69,600 52.60% 36,610 13 72,800 31.51% 22,943 7 53.85%
埼玉県 311,200 56.90% 177,073 25 253,600 35.81% 90,827 12 48.00%
千葉県 249,600 56.00% 139,776 28 215,200 34.91% 75,137 13 46.43%
東京都 656,000 66.50% 436,240 126 393,600 45.41% 178,753 102 80.95%
神奈川県 400,000 61.50% 246,000 26 312,800 40.41% 126,418 14 53.85%
新潟県 74,400 46.20% 34,373 16 78,400 25.11% 19,690 9 56.25%
富山県 32,800 52.00% 17,056 4 37,600 30.91% 11,624 2 50.00%
石川県 44,800 54.70% 24,506 11 41,600 33.61% 13,984 8 72.73%
福井県 25,600 56.00% 14,336 5 29,600 34.91% 10,335 4 80.00%
山梨県 30,400 56.30% 17,115 7 29,600 35.21% 10,424 4 57.14%
長野県 60,800 48.90% 29,731 8 77,600 27.81% 21,584 5 62.50%
岐阜県 72,000 55.10% 39,672 11 76,800 34.01% 26,123 6 54.55%
静岡県 115,200 53.00% 61,056 11 134,400 31.91% 42,894 6 54.55%
愛知県 320,800 58.70% 188,310 46 278,400 37.61% 104,720 30 65.22%
三重県 62,400 50.50% 31,512 7 66,400 29.41% 19,531 5 71.43%
滋賀県 59,200 55.00% 32,560 7 56,000 33.91% 18,992 4 57.14%
京都府 128,800 66.40% 85,523 31 88,000 45.31% 39,877 20 64.52%
大阪府 375,200 60.50% 226,996 52 304,800 39.41% 120,137 33 63.46%
兵庫県 205,600 60.60% 124,594 36 198,400 39.51% 78,398 27 75.00%
奈良県 52,800 58.90% 31,099 10 48,800 37.81% 18,454 9 90.00%
和歌山県 28,800 49.50% 14,256 3 33,600 28.41% 9,547 2 66.67%
鳥取県 17,600 43.50% 7,656 2 20,800 22.41% 4,662 2 100.00%
島根県 19,200 47.00% 9,024 2 24,000 25.91% 6,220 2 100.00%
岡山県 76,000 50.50% 38,380 17 69,600 29.41% 20,473 10 58.82%
広島県 106,400 59.90% 63,734 20 102,400 38.81% 39,746 14 70.00%
山口県 44,800 42.70% 19,130 10 48,000 21.61% 10,375 4 40.00%
徳島県 24,000 51.70% 12,408 4 24,800 30.61% 7,592 2 50.00%
香川県 29,600 50.60% 14,978 4 34,400 29.51% 10,153 2 50.00%
愛媛県 40,800 52.20% 21,298 5 48,000 31.11% 14,935 3 60.00%
高知県 20,800 47.40% 9,859 3 24,000 26.31% 6,316 3 100.00%
福岡県 212,000 54.40% 115,328 32 180,800 33.31% 60,233 20 62.50%
佐賀県 28,000 43.00% 12,040 2 32,000 21.91% 7,013 2 100.00%
長崎県 42,400 44.60% 18,910 8 49,600 23.51% 11,663 4 50.00%
熊本県 59,200 46.10% 27,291 8 65,600 25.01% 16,410 7 87.50%
大分県 36,800 46.40% 17,075 5 40,000 25.31% 10,126 4 80.00%
宮崎県 32,000 45.10% 14,432 7 40,800 24.01% 9,798 3 42.86%
鹿児島県 48,800 42.70% 20,838 6 60,000 21.61% 12,969 2 33.33%
沖縄県 56,800 39.20% 22,266 7 64,800 18.11% 11,738 4 57.14%
全体 4,921,600 54.70% 2,756,726 729 4,413,600 30.00% 1,488,497 473 64.88%
ここでは全ての大学の生存得点は掲載していませんが
気が向けば載せるかも知れません(し、記事自体を削除するかも知れません)。

学力偏差値が低いからダメとか大学進学率が高いから良い
という単純な関係ではなく、近くにどれだけ大学があるか、定員数はどれくらいか
近隣の大学と比較し学力偏差値はどれくらいか、進学者はどれくらいいるか
そのような要因が重なって生存得点が高くなったり
あるいは低くなったりする傾向が見られたかと思います。

推定結果がどの程度正しかったか、2030年にまた見直せれば良いなあと思います。

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