竹田いさみ『物語 オーストラリアの歴史: 多文化ミドルパワーの実験』 - Fuwafuwa's memorandum

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竹田いさみ『物語 オーストラリアの歴史: 多文化ミドルパワーの実験』

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竹田いさみ

中央公論新社 2000-08-25
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オーストラリアの歴史と言いつつオーストラリアの「外交」の歴史。英国の没落とともに植民地から独立国としての地位を獲得するものの白豪主義政策を取り続けたオーストラリアが、国際政治の中で経済的自立を謀るためになし崩し的にアジアを中心とした多文化主義に移行した経緯が淡々と語られる。

最早「物語」としてのコンセプトは特になく「俺はこれが好きだから書きたいんだ」が全開で非常に良し。私はこういう本が読みたいんだ!

移民はおろか難民の受け入れにすら消極的な日本が人種差別的だと批判を受けることは多々あれど、「多文化主義」を標榜し大量の移民を受け入れているオーストラリアのような国においても、それは決してイデオロギーや人道的な配慮ではなく、主に政治的経済的誘因が働いていることはまず念頭におくべきことであると思う。

アメリカと異なり税的な制限も少なく寧ろイギリス艦隊によるパックスブリタニカを享受したオーストラリアが、その直接の支配から解放された後も白人至上主義に傾倒し、移民法においてあからさまな人種差別措置を取ったこと、中でもオーストラリアに経済的利益をもたらし得る日本人だけは名誉白人として扱ったこと、国際社会が広大な土地を持つオーストラリアに難民を流し続け受け入れを迫ったこと、中々生々しいエピソードに溢れていてよかった。

その後も首都をシドニーにするかメルボルンにするか対立した挙句にナンにもないど田舎のキャンベラが折衷案として首都に選ばれたこと、南十字星の国旗とイギリス国旗で対立した挙句に南十字星にイギリス国旗をくっつけてオーストラリア国旗とするなど、今の大国「オーストラリア」に至るまでに直面した凄まじい葛藤を、不恰好であってもいくつも乗り越えてきた所など、非常に面白いし寧ろ好感度が高まった。

国の話になるとすぐに国民性だの人種だの文化だのに帰着しがちだが、文化には歴史があり国民性(というものがあったとして)というものは、歴史や経済や政治や宗教等々の葛藤があってこそのものだろう。目の前の状態だけを見てそれをあたかも人種の普遍的な特性かのように語るのはあまりにも乱暴である。

そもそもが植民地国であり労働力を移民に頼らなければならなかったからこそ「人種とは何か?」に泥臭くも立ち向かい欺瞞や差別にまみれながらも葛藤し闘う国はとてもかっこいいし美しいものであると私は思う。

※シドニー大学には東アジア研究科が存在するがこれは大戦中に連合国が東アジア研究をする必要に迫られた名残で、同じくアジア研究で有名なコーネル大学もこの流れを汲んでいるらしい。個人的に面白かったのでメモ。

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