2030年に日本社会はどうなっているかを推定する:大学で社会学を学ぶということ(実践編) - Fuwafuwa's memorandum

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2030年に日本社会はどうなっているかを推定する:大学で社会学を学ぶということ(実践編)

先日「大学で社会学を学ぶということ」という記事を書きまして、その中で「未来に何が起こるのかを予測できる、予測できるとそれに備えることができる」という話をしました。”できる”と大見得を切って言いっ放しというのは、甚だ不誠実な態度であるなあと思い、今回は「実践編」を書こうと思います。

とは言え、あまり真面目に書こうとするといつまでも草稿が終わらなくなってしまうため、ここでは、下記のトピックについて2030年にはおおよそどのような状態になっているかについて、短く私なりの見解を述べようと思います。

■人口について:2030年にはアルバイトは高齢者ばかりになる?
■教育について:2030年には大学進学率は30%まで下がる?
■就職について:2030年には正規・非正規の区別がなくなる?
■仕事について:2030年には労働はフレキシブルになり男女の別がなくなる?
■出生について:2030年にも出生率は微増に留まる?

後々読み返した時に、当たっているものもあれば、外れているものもあると思います。しかし仮に外れていたとしても「論拠」が明確であるならば、そこに誤りがあったと判断することができると思います。その限りで、当たっていても外れていても意義のある草稿になると思います。

■人口について:2030年にはアルバイトは高齢者ばかりになる?

厚生労働省の人口動態調査から2015年現在の人口動態と2012年の年齢階級別死亡率を参照し、2015年の人口動態と、2030年の人口動態(推計)を表にしました。95歳以降からはぐっと死亡率が上がるため、2030年の推計ではそれ以降の年齢階級の人口がマイナスになってしまいましたが、一旦ゼロとしてグラフにしています。

2015年人口動態
2030年人口動態推計

未来を知るためには過去と現在を把握しなければなりません。そこで、一旦は2015年の人口動態を見てください。特徴的な点にいくつか言及します。まず70歳前後の世代が近い世代よりも人口が少なく、凹んでいます。これは戦後の出生率が下がった時代の特徴です。また、49歳にも顕著な凹みがあります。これは「丙午」と言って、この年に生まれた女子は気性が荒く災いをもたらすという迷信で一時的に出生率が下がったものです。

次に、65歳前後の世代を見てください。飛び抜けて人口の多い世代です。ご存知だとは思いますが、65歳というのは本格的に年金が給付される年齢です。

定年制、年金、シニア人材についての覚え書き

シニア人材の活用が叫ばれて久しい現在、それがなぜ今起こったのかは明白ですね。年金は常に平均寿命との関係で給付年齢が引き上げられ、それに伴い産業界には定年退職を引き延ばすことが、政策的にも社会的にも要求されてきました。

しかしこの世代はあまりにも人口が大きく、また、産業界もこれ以上は定年退職を引き延ばすことができなくなってきています。2030年にはこの世代が80歳前後になっていますので、年金受給年齢が更に引き上げられる可能性があります。若年世代が減少し続けているためシニア人材は更なる労働が求められるでしょうが、その時にはもはや企業勤務ではなく、非常勤での軽作業での労働となり、これまでは「若者」のイメージが強かった派遣やアルバイトで中心的な存在になっていくのではないでしょうか。

■教育について:2030年には大学進学率は30%まで下がる?

国民全体の教育水準が高く中卒からの正社員就職の道がほぼない日本では、2030年においても95%以上の人が高校を卒業すると思います。しかし大学に関して言えば、給付型の奨学金がほとんどない日本では、1980年代後半と同水準、30%まで下げるのではないかと考えています。

大学進学率が10%を切っていた1950年代から、2015年には進学率が50%を上回っています。けれどその増加は必ずしも直線ではありませんでした。1960年代後半以降の高度成長に伴い、企業の新卒採用では徐々に大学学卒が重視され、特に男子の大学進学率は1970年代には40%を上回りました(男女合計では28%ほどです)。

しかし大学進学がコモディティ化すると同時に、大学卒が必ずしも将来のエリートの道を約束するものではなくなり、日本全土がバブルで浮かれていた1980年代にはむしろ男子の大学進学率は一旦下落します。代わりに女子の大学進学率が若干上昇することで、1990年頃には大学進学率は25%ほどに落ち着きます。

竹内洋『教養主義の没落:変わりゆくエリート学生文化』

大学進学率が現在のように(相対的に)高くなったのは、むしろバブルが崩壊した1990年以降からで、2010年頃まで急激に上昇しています。これは経済の低迷に伴い大学重点化の政策が取られたからであり、規制が緩和されたため、すでに少子化が始まっていたにも関わらず急激に大学・大学院の数が増えました。

学歴主義と大学改革:新卒における大学選抜という格差

ところが政策的な思惑は見事に外れ、日本は1970年代のような華々しい経済発展に再度巡り会うことはありませんでした。2010年代から文部科学省はあからさまに大学、特に文系学部や低偏差値の所謂F欄大学の縮小の動きを見せています。そのため、一旦は上昇した大学進学率は、2030年にはバブル崩壊時よりやや高い30%ほどに落ち着くのではないでしょうか。

少子化に逆行して大学・大学院の数を増加させたため、この縮小の動きは極めて激烈なものになるかと思います。

■就職について:2030年には正規・非正規の区別がなくなる?

労働者の種類は下記の三つに区分されるそうです。
1. 自らのスキルで渡り歩く高度人材
2. 企業勤務の一般人材、所謂正社員
3. 軽作業に従事する非熟練人材

もちろん政府と企業が減らしたいのは福祉の手厚く給与も高い2で、そのためには2を主に3に移動させる必要があります。本来、年功序列終身雇用というものは日本の労働契約の場において保証されるものではなく、長く続いた慣習、失業に対する福祉を用意したくない政府、社会的な期待、労働組合からの強い要請、など、様々な要因によって維持されてきました。

日本の雇用:メンバーシップ型企業において重要視される能力

しかし、年功により給与が上がる年功序列は、社内の人口が若い内には非常に多くの労働力を安価に使えるため、企業にとっては成長の起爆剤になるのですが、社内の人口が高齢化した途端そのような構造は瞬く間に崩れ、給与を減らすか、人を減らすかを迫られます。

(年功序列型終身雇用制度の破綻と成果主義に関する覚え書き

人口動態と経済:産業、組織における少子高齢化

また、大量生産から多種製品少量生産といった産業構造の変化が、大量の同質従業員ではなく、少数の先鋭部隊を多数の流動的な軽作業者による効率化を希求するものである以上、所謂正社員といった概念自体が薄れていくことと考えます。

流動化する雇用と組織でざいん:IT化に伴う人材配置

■仕事について:2030年には労働はフレキシブルになり男女の別がなくなる?

いよいよ65歳以上人口が相対的に増大したため、この頃政府もようやく真剣に少子化対策に乗り出しました。しかしこの道は平坦ではありません。日本においては、人々は個ではなく家族という単位で、経済活動と家庭内生産を両立させてきたからです。

そのため1990年代以降経済が停滞し続けている日本において、出生率を上げようと思うと、まずは人々の働き方を改革し、男女ともに労働と家事育児を両立できるようにしなければならなかったのです。

濱口桂一郎『働く女子の運命』

率直にいって、この政府の対応は遅すぎました。女性がまともに就労することを容認されるようになったのは、ごく最近、それこそ2015年前後からです。最近人気を博した漫画『東京タラレバ娘』は、精神的に自立できず経済的にも不安のある32歳の女性たちが主人公ですが、それもそのはず、彼女らの世代はまだ、女性が総合職に就職しようとすると、女性というだけで拒否されていたような世代です。

東村アキコ『東京タラレバ娘』

もちろん2018年現在にも、制度はあるが実際には産休が取れない、男性が育児休暇を取れない(取れても極めて短い)、育休を取ると昇進できない、結婚すると退職を迫られる、等様々な問題はありますが、女性の労働力化と働き方改革が政策として本格的に進められている以上、トレンドとしては、今後15年で徐々にこれらの問題がゆっくりと解消されていくはずです。

しかしそれは同時に社会の上澄みの層だけの話であって、下層では男女ともに苦しい状況に置かれ得るかも知れません。

■出生について:2030年にも出生率は微増に留まる?

上記のような極めてドラスティックな動きがここ数年で見られますが、恐れながら、再度申し上げると、この対応はいくら何でも遅すぎました。まず女性の総合職(この世にも珍奇な区分も再三男女の雇用機会を平等にするように迫られた経団連の苦肉の策ですが)での就労が一般的なものになるまで、あと15年は充分かかると見た方が良いです。

少子化による有望な若者の獲得が高難度化したこともあいまって、2015年以降女性の長期勤務を前提として就労は称揚されてはいるものの、それが「ごく当たり前のもの」になるまでは、男性の家事や育児参加への理解、法制度、社会的なあり方は大きく変化するには至らず、結果として主体的な家庭内生産が経済活動により阻害されてしまうでしょう。

また、婚外子やパートナー、父子家族、養子縁組等、多様な家族や夫婦のあり方について議論されることすらない日本においては、昭和・平成と続いた、父、母、子からなるコストの高い「普通の家族」像を重要視するあまり、結婚制度そのものを見直すといった方法で出生率を増加させることもできないでしょう。

従って、出生率を増加させられるとしても、それは女性就労と男性家事育児が充分に一般化した、2030年以降となると考えられます。

以上、長くなりましたが実践編でした。もし、大学で社会学を専攻している学生さんが、この草稿を読んで少しでもモチベーションが上がることがあれば幸いです。

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