東村アキコ『東京タラレバ娘』 - Fuwafuwa's memorandum

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東村アキコ『東京タラレバ娘』

東京タラレバ娘(1) (Kissコミックス)東京タラレバ娘(1) (Kissコミックス)
東村アキコ

講談社 2014-09-12
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読んだ。
21世紀の世の中にまだ「結婚したら幸せになれる」みたいな道徳律があるらしくなんだか怖くなった。

世の中には「アガリ」という概念があるのだなということに最近気がついた。男の人ならそれは「大企業/公務員に行ったらアガリ」だろうし女の人なら「結婚したらアガリ」なのだろう。何をやったって「アガリ」なんかはないはずなのだけど、なにがなんでも「アガらない」内にはそのような冷静さを持つことは困難なことらしい。

この主人公3人の聡い所は実は「結婚しても人生はアガらない」ことを知っていることであって、知っているからこそいつまでも結婚できない。結婚しても子供を産んでも育てても人生にはアガリがないのだと突きつけられるよりは永遠にそれを不可知のものとして停滞し続ける方が幾分マシなようだ。そこには幸せはないけど「アガリ」という希望がある。

事ある毎に「それ女性蔑視だよ」と怒る割りには自分たちの言動に責任がなく、仕事はまあともかくとして(すぐにほっぽりだすので元からそんなにやる気もないのだろうし)婚活(?)に依存する割りには恋愛において主体性がなく、何かが起きる度に男のせいで殊更自分たちを「弄ばれた」惨めな存在にしたがるマゾヒスティックさはこうまでくると最早不気味なまでである。

結婚できない(?)ことよりも何よりも、男女平等を歌い結婚という「アガリ」に固執しながら率先して「婦女子、性的に堕落することなかれ。婦女子、か弱く受け身で男の指示を待て。」というような父権的な価値観を自らに率先して課すことこそがこの主人公の最も辛く苦しいことなのだなあと思う。

今の世の中「女性の活躍を」と言いつつ結婚した女性が辞めさせられるなどザラに存在しているし、私のような者ですら「か弱い姿でいた方が得だよ」と女性に助言されることもあるので、そうした環境の中で育った人たちが大人になってから急に「大人なんだから自己責任だよ」と言われても、性根が素直ならば尚更折り合いをつけるのは容易なことではないだろう。

そうした価値観と制度と現実の矛盾が歪みを生んで飲み込まれた女性たちが捻り出した唯一の「折り合い」というものが「ただ幸せになりたいだけなのに悪い男にかどわかされて不本意な交渉を結んだかわいそうな私」像なのだとすれば、それはなんとも残酷に過ぎる世界観である。

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