猪木武徳『戦後世界経済史:自由と平等の視点から』 - Fuwafuwa's memorandum

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猪木武徳『戦後世界経済史:自由と平等の視点から』

戦後世界経済史―自由と平等の視点から (中公新書)戦後世界経済史―自由と平等の視点から (中公新書)
猪木 武徳

中央公論新社 2009-05-01
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かなり重くて読むのが辛かったけど面白かった。戦後における世界経済を一冊で振り返ったかなりの力作。この水準の本が新書で読めるというのはたいへん贅沢だなあと思った。

巨大な経済で世界を席巻したアメリカを中心に、ヨーロッパ、アフリカ、アジア、イスラームなどあらゆる経済圏における勃興と盛衰のあらましがこれ一冊で読める。アメリカやヨーロッパ、アジアを取り扱っている書籍は多いが、アフリカやイスラームにまで言及している本はなかなか希少ではないかと思う。

経済学というと強固に理論とその方程式化を重視している印象があるが、経済の経緯はとても美しい理論では言い表せないほどに多様で予測不可能である。こうした過去の事例をつぶさに振り返ることで経済学ひいては社会科学はより豊かな姿を現わすだろう。

興味の範囲が非常に広い上に、政治や地理の問題も絡んでくるため要約するのは難しいが、私が特に気に入ったのは社会主義国の勃興と没落である。今でこそ社会主義というと不合理の極み、誤った理論という風潮が強いが、それは過ぎたことだからこそ言えることであって、戦前および戦後においては自由主義とともに注目された理論であったことに変わりはない。

そこでは寧ろ完全に自由な市場の手に委ねられた自由主義こそが不合理なものであると理論上は考えることができた。収益が得られる市場には大量に参加者が現れるため、結果として0となるというのがその理屈である。ところが自由主義はむしろその不確定性にこそ隆盛の余地があった。社会主義は不確定性に対応することができず、また原価を顧みず過度に生産拡大を動機づける設計であったことが仇となり自滅の道を歩んだ。

本書で言及される中にはかなり示唆に富んだ面白いエピソードがいくつもある。瓶入りのスープを大量に買って中身を破棄しビンを洗浄して販売する。毛沢東は規模の経済を度外視して農民に個別の炉で鉄を作らせた。ソ連の日本大使館で設備のメンテナンスがあり、今まで利用されたことのない設備だったために、計測係が業者の手順とそれにかかる時間を計測したが、業者の動きはあたかもスローモーションでの撮影だったこと。北朝鮮では総書記が向上や企業を見回り指示を出しそれがなにからなにまで踏襲されたが甚だ効率的とは言い難かった、等。

私が面白いと思ったのは、社会主義というのはその市民の内発的動機を著しく低減させる運用に問題があったものの、それを克服するために設計し直せば、場合によってはもっと上手く回転する余地があるのではないかと考えたからだ。そして、社会主義のもう一つの問題点である、不確定性に対する脆弱さについては、これは実は現代のIT化と極めて相性がよいのではないかとすら考える。無人のコンビニが立ち通販で注文した商品がその日に届く現代である。あらゆる想定外を電子上でやりとりし、全体の計画において該当部分と関連するすべてを最適化することなどはっきり言って造作もないことだろう(その高度に情報化された状態を構築できれば、の話だが)。

広大な土地と多くの人口を抱えるアフリカ、豊かな天然資源を持つイスラームなども世界経済を考える上では重要だろう。いろんな国の経済について知れてよかった。

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