中村圭志『聖書、コーラン、仏典: 原典から宗教の本質をさぐる』 - Fuwafuwa's memorandum

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中村圭志『聖書、コーラン、仏典: 原典から宗教の本質をさぐる』

聖書、コーラン、仏典 - 原典から宗教の本質をさぐる (中公新書)聖書、コーラン、仏典 - 原典から宗教の本質をさぐる (中公新書)
中村 圭志

中央公論新社 2017-10-18
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異様な本だった。

まずもって守備範囲の広さが異常である。何せ聖書とコーランと仏典を一冊で紹介するのである。かといって内容が軽薄かと言えば、似たようなエピソードが複数存在する福音書の一字まで比較するほどの徹底ぶりである。このような偏執さは聖書解釈や歴史的背景を重視する神学者や史学者には寧ろ見られないのではないか。

経典への読み込みには執念を感じる割に、研究動向には言及せず、経典と、その周囲の雑学の話に終始する。多弁な一方で著者の主張は見えてこない。

明らかに研究者の書き方なのに、著者の専門性がほぼ見えない(敢えて言うならコーランへの言及が少なく仏典を参照するに当たりパーリ語でもヒンディー語でもなく漢文を引用する辺り、主な興味はユダヤ・キリスト教にあるのではないかと推測される)。Googleで検索しても論文は出てこないが一般向けの宗教の入門書が大量に出てきた。

論文を書かずに入門書ばかりを書くことは時々揶揄の対象にすらなり得るが、一般向けの本を書き続けた人の凄みを感じる一冊だった。著者は信仰からも特定の学問からも距離を置き、忠実に経典を読み、第三者的な視点からそれを現代風に記述する。終盤、パーリ仏典から大乗仏典への、修行から救済への移行を、ユダヤ教からキリスト教への流れになぞらえる点などは、幅広く経典を読みこなした著者ならではと思わせられる。

多分読み物の種類としては文芸評論に近いのだけど、それを聖典でするというのが珍しくて面白かった。かなり良い仕事なので、ちゃんと評価されてほしい。

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