Fuwafuwa's memorandum

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オーウェン・ジョーンズ『チャヴ: 弱者を敵視する社会』

チャヴ 弱者を敵視する社会チャヴ 弱者を敵視する社会
オーウェン・ジョーンズ Owen Jones 依田卓巳

海と月社 2017-07-20
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日本にはマイノリティを守らなくてはならないと言う建前すらない(最近は徐々にそうした傾向が生まれ始めている?)が、かつては福祉国家を標榜したイギリスにおいても建前は建前でしかなく、社会的な正当性に基づいたバッシングがマイノリティではなく労働者階級へ向けられているという告発本。他人を攻撃することは人間の快楽に深く根ざしているので規制しても対象が置き換わるだけというのはさもありなんという感想。

基本的に「○○はこう言った」のような伝聞や、資料や統計などのエビデンスを抜きにした論が展開され「サッチャリズムによって製造業は破壊された」「労働は鉄鋼や炭鉱からスーパーマーケットに置き換わってしまった」のような断定が入るので私は始終「えーっ、そ、そうなの?!」と困惑してしまった。階級社会が根強いイギリスで貴族院議員がノブレスオブリージュよろしく労働階級を支配し導くことが使命と感じていても不思議ではないが、その出所が伝聞である限りは私はゴシップと同じだと思う。まあ万人が読みやすいようにわざとそうした書き方をしたのかも知れないが少なくとも私は困惑した。

またサッチャリズムが製造業を破壊したという論旨そのものが乱暴に思えた。それというのも1980年代といえばすでに産業自体が大量生産大量消費から多品種少量生産へ移行した時代である。また、かつては世界の工場と言われたイギリスが、アメリカや日本やその他のアジアにその地位を取って代わられたことも重要である。例えば大幅な法人税引き下げというと(所謂)左派には富裕層を優遇するものとしてすこぶる評判が悪いが、国際社会において法人税を下げ企業を誘致し雇用を創出するというのはその結果を度外視すれば考え方の一つではある。

もちろん1960年以降国際社会の大幅な法人税引き下げのトリガーになったのはイギリスなので、そういう意味では特別な措置だったとは思う。がしかしそうした政策の一つ一つを悪意や特定の層への利害に関連付けるやり方は、無条件に悪意は全くないのですと主張することと同じく作為的な方法ではないか。そして政策を施行するにあたっての悪意のありなしは社会の中でチャヴが立たされている困難な状況とはそれほど関連がないように思える。

やや風呂敷を広げすぎている感じがするものの、著者による素朴なインタビュー(例えば「あなたの階級は何か?」といった友人への問いかけ)の素朴な面白さは随一であって、こうしたイギリス人における階級のリアリティはもっと読みたいなあと思った。「公営住宅」「サッカー」「パンク」のようなキーワードがイギリス人にとってどういう意味のあるものなのかが分からないので論旨が追えないこともしばしばあった。

後完全に個人的に気になっただけなんですが、帯の「イギリスがたどった道は 日本がこれから歩む道」というのは誤記だよなあと。率直に言って「弱者を敵視する社会」という意味で言えば日本の場合はイギリスよりもなお一層状況が悪い。(かつては福祉国家だったイギリスと、そもそも福祉国家化への道を永久に閉ざされた日本を比較するもの意地悪ではあるが)弱者や貧しさへの悪意や敵意が欧州各国(或いは自己責任大国アメリカすら)より遥かに高いことは各種国際比較で分かっている(検索すればいくらでも出てくるので省略する)。その証拠にこの手の本は日本では話題にすらならない。弱者に対して関心すらないからだ。

但し日本の場合は名目上階級がなく高度経済成長期に下位層の底上げに成功し、国民全体の教育レベルが高く治安がよいといったいくつかの条件で可視化されにくくなっているのではないかと考えられる。今後経済の弱体化で緩やかに状況は悪化するが、そもそも極端な高齢化の状況にあるので、社会的な暴動も起こりいにくそうではある。

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