Fuwafuwa's memorandum

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ダニエル・S. ハマーメッシュ 『美貌格差:生まれつき不平等の経済学』

美貌格差: 生まれつき不平等の経済学美貌格差: 生まれつき不平等の経済学
ダニエル・S. ハマーメッシュ Daniel S. Hamermesh

東洋経済新報社 2015-02-27
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普段なら絶対買わない種類の本ではあるんですが帯の煽りのパワーがすごすぎて買ってしまった…。曰く「ブサイクを守らないなんて筋が通るか?」こんな面白い一文何食ってたら思いつくんですか?原題はBeauty Paysなので、格差というよりは人間の美しさによって個人や組織にどれくらい利益が発生するかという話。

全体的に砕けた内容ではあるのだけど巻末にかなり詳細な参考文献が掲載されているのでリファレンスとして購入。でも実際読んでみたら、研究や調査に対して何の注釈も付いていない場合があまりに多い…。色んな研究が羅列されているのはいいんですけど、具体的な調査内容がかなり省かれてしまっているのでどれくらい本気にしていいのか難しい。

そもそも「客観的な美醜評価」といっても女性は化粧をしていることが殆どだろうし、髪型やヒゲをセットしているか否かも評価者に影響を与えうることだと思う。またファッションというのはしばしば人々によるあるグループへの帰属の表明だ。その「美しさ」は生来的な顔面の造形というよりは、その人の社会適応性に依存しているようにも思われる。そうするとそれらの研究は本当に「生まれつきの美醜」を測定していると言えるか?しかし被験者の顔写真を論文に掲載するわけにもいかないので難しい問題だ。

また本書ではやたらと「統計的に有意だった」という記述が採用されているのだけど(これ、なんの分析をして有意と言っているんだ?群の比較が多いので分散分析か?)、そもそもnすら書かれていないので解釈に困った。特に小数点以下0.1の差異で「有意」ということはサンプルサイズ大きすぎるだけでは…?

とそういう細かいことに拘りすぎても仕方がないので本書の内容に入る。いくつかおもしろいと思った点を列挙。前述の理由から結構怪しい主張も含まれるが参考程度にはしてもいいだろう。

・人の美しさの測定基準は一部の特殊な文化圏を除いてほぼほぼ一致している
・任意の個人の同年代における相対的美しさは生涯あまり変わらない
・評価者に年齢効果を除外するよう呼びかけても年齢は美しさにマイナスの影響を与える
・化粧品等々への投資は個人の美しさに貢献しない
・整形への投資が個人の美しさに貢献することは滅多にない
・顔の美しさと肥満は独立している
・美しさは給料にプラスの影響を与える
・美しい人の多い組織ではそうでない組織より高い利益を上げる
・CEOが美しい組織ではそうでない組織より高い利益を上げる
・美しい人は一般にそれだけでよきふるまいをするという先入観を持たれる
・しかし実際にはそうでないと分かった時のペナルティは、その人が美しくない場合よりも大きいものとなる
・結婚しているか否かは容姿の美醜とはあまり関連しない
・夫婦の美しさは大体似通っている
・美しい女性はより収入のある旦那を迎える傾向がある
・容姿の美しさと知性は関連しない

私がこの本を読んで面白いと思ったのは、おそらく著者の意向とは反対に、本書に掲載される多くの研究結果が「美しさによるメリットは一般的に考えられるほどむしろ大きくない」ことを示しているからだ。例えば給料は
男・美しい:+4%
男・美しくない:-13%
女・美しい:+8%
女・美しくない:-4%
だが、同時に本書では男女の給料格差は15%であることにも言及している。そうすると女性で最も美しいグループでも平均的な男性よりも給料は低く、逆に男性で最も美しくないグループでも平均的な女性よりも給料は高くもらっているということになる。仕事による報酬という場面に限定すれば「美女は得をする」なんていう言説がいかにとんでもない錯誤であるかわかるだろう。これは平等がまあまあ一般化しているアメリカでの話であって、日本ではこの格差はもっと洒落にならないレベルであろうと予見される。

本書における美醜による“格差”というものは、上記のようにほんの数%、高くて十数%程度の差異である。しかし実際には性別や地域や学歴、親の年収のような要因の方がよほど強く影響している。日本で言えば沖縄の平均年収は東京に対して57%、中卒の平均年収は大卒に対して56%であり、これらの格差は美醜によるものよりも、よほど強力に個人の運命を規定してしまうのである。もちろん私は美醜による格差や差別を肯定する立場にはないが(そもそもそれらは私にとっても非常に不愉快で下品な風潮だ。その現れとして私はテレビを一切見ない)、一般的に感じられているほど強い要因ではないと言える。

もちろん程度問題ではあるので、中には疾患や欠損、あるいは事故により非常に辛く苦しい思いをしている人がいるとは思うが、ここではそういう人を除いて、性別や生まれた場所などよりもよほどリカバリーの利く要素であると言える。また、例えば自身が平均的な人よりもやや美しくないとして、どの程度の自助努力によりそのペナルティを克服できるかを計測できることも本書の面白さだと思う。

過度の化粧や整形によって美しくなさを克服しようとするのは不毛である。物語の中では1の容姿を10にすることも可能かもしれないが、現実には人間の顔はそうそう取り替えられないものであり、そのための痛みや苦しみたるやその結果には到底釣り合わないと本書が教えてくれる。

快楽を得たいなら自分が本当に必要としていることを理解することだ。今よりもっと美しくなりたいというならそれはそもそも到達しようのない願望なので早々に忘れてしまう方が良い。化粧や宝飾品が+に働かないことも、寄せる歳月は美しさを損なうことも分かっている。賞賛されたいだけならそれよりもっと確実な方法が他にもいくらでもある。結婚したいだけなら美しさは関係ない。よい給料の旦那を迎えたいなら自分自身が高収入になるのが最も効率よく目的を達成する手段と言える。

結局個人において最も適切な振る舞いは何かを知ることが効果的な生存戦略となる。美人には美人にしかできない振る舞いがあるし、不美人には不美人にしかできない振る舞いがある。自分はどちらかを知り、何をするべきかを知り、その効果がどの程度かを知り、人生を自分でデザインすること、化粧でも整形でもどうにもできない私たちにできることはそれくらいであろう。

佐藤百合『経済大国インドネシア: 21世紀の成長条件』

経済大国インドネシア - 21世紀の成長条件 (中公新書)経済大国インドネシア - 21世紀の成長条件 (中公新書)
佐藤 百合

中央公論新社 2011-12-17
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作者のインドネシアへの思いが前編から伝わってくるたいへん良い本。ただしインドネシア経済が今後重要になってくる根拠として一貫して人口オーナスの話しか出てこないのでやや肩透かしの感がある。日本が隆盛を誇っている最中に提唱されたアジア経済と労働人口を紐づけた理論はあまりに有名なので日経新聞でも読んでいる人なら大抵知っているのではないか。

人口オーナスによる経済の勃興の条件として本書では
1.人口抑制のための少子化が継続されること
2.労働人口を充分稼働させるだけの労働を用意する

1は勿論そうなのだが今の日本が直面しているように長きに渡り続く少子化は後の高齢化を招く諸刃の剣である。少子化による人口オーナスの稼働の例で中国の一人っ子政策が挙げられたが、そうなのか?一人っ子政策が始まった時期的に人口爆発を憂慮しての政策かと思っていたが、中国の歴史について疎いのでよくわからない(そもそも経済学で労働人口と経済との関連が重要視されるようになった時期とも前後すると思うが、要チェック)。

2.については現在と未来の労働人口の構成、国民の教養レベル、国際関係における想定賃金の高低を分析すればある程度定量的に先をみとおせそうだが、タイミング悪く今の自宅のネットの調子がすこぶる悪いので後の課題とする。

また著者は歳入を天然資源の輸出に依存することで国内の開発が停滞・衰退する「資源の呪い」や、資源輸出国が独裁国家と親和性が高い点を挙げ、インドネシアと言えば必ず言及されるような天然資源の豊富さについて触れない点などはいっそ不自然なまでである。

もちろんオランダ病も資源国のジニ係数の高さも極めて重要な点ではあるが、現在台頭してきている情報技術に代表される科学技術が基本的に複製可能であることを考えれば、決して複製され得ない天然資源の希少価値が今後も高まり続けることは自明である。天然資源は当然天然そのままよりも加工済みのものの方が高く輸出されるため、インドネシアの中で特に重要な開発は天然資源に関連した業界ではないかと私は思うのだが…。

読了後に著者の経歴を確認すると日本貿易振興機構アジア経済研究所地域研究センター次長ということなので、インドネシアに詳しいのは当然ながら、執筆に際してあまり中立的な立場の人では無かったのだろうなあとなんとなく想像。本書の中でかなりおもしろいのは、インドネシアにおける政治的な趨勢や民主化に伴う権力と資本の統合といった視点。いい本なんだけどなんだか違和感がすごかった。

梶井厚志『戦略的思考の技術: ゲーム理論を実践する』

戦略的思考の技術 ゲーム理論を実践する (中公新書)戦略的思考の技術 ゲーム理論を実践する (中公新書)
梶井厚志

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一応最後まで目を通したけどいまいち面白みがわからなかった。「女性は装いに拘りがあるものだが」云々的な比喩が各所で見られ読みやすいように例として挙げてくれているのだろうとはわかるものの現代的なモラルに照らして結構微妙だなと思う表現が多かった。そんなに古い本かなあと思いきや初版が2002年なんですね。う〜ん微妙だ。

書いてある内容もまあそうだよねという内容が多いもののそれをある文脈では「コミットメント」と呼んだり「シグナリング」と呼んだりするのだなあという点で勉強になった。語彙がないとそもそも議論を追えなくなる場面は少なくないし、どんな話をするにせよ語彙が多いに越したことないので。

経済学は歴史的に数式に傾倒しているところがありそれが面白み(普遍化、実装への試み)でもあると思うのだけど、そういうものを省いてしまっているところ(恐らく意図的に)があんまりピンとこなかった理由かもしれない。

ゲーム理論の本としては珍しく囚人のジレンマ(この詩的な表現に着目せよ!)の話が一切なく、あとがきを読むと「ゲーム理論の本を読むとどこでもかしこでも囚人のジレンマの話をしており囚人のジレンマこそがゲーム理論かのような論調を見るとこれはもう絶対に迎合しないぞという気持ちで執筆した」とあり個人的にはそこが一番熱かった。

経済学者の書く本って洗練されているというか体温が低めな印象があるけどこういう著者の変質的な拘りが私は読みたいのです…(自分のこうした性質を鑑みるにやはり何を読んでもエンタメとしか認識していない気もする)。

平野克己『経済大陸アフリカ』

経済大陸アフリカ (中公新書)経済大陸アフリカ (中公新書)
平野 克己

中央公論新社 2013-01-24
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アフリカの話だが、経済の話でもあるので、国際社会や経済学的なトピックも手広く扱っている。かなりおもしろい。完全に期待を上回っていた。

第1章は丸々中国に充てられている。それと言うのも中国において資源の確保は国家安全保障と密接な関係にあり、中国経済がテイクオフしてからはアフリカの支援開発が政策的に進められてきたから。とはいえ中国の先進国の中では特異な政治体制や、アフリカ国内の高すぎる人件費などの問題が組み合わさり、アフリカ政治には接触せず中国企業をアフリカに展開するという形で支援を進め、アフリカ人の就業率には寄与しないものの概ね歓迎されているらしい。

物質が飽和し技術が一般化した現在では、技術と資源の価値は反転しアフリカ大陸のような豊富な資源を持つ地域を獲得することこそが未来のテクノロジーを独占するための第一歩となる。このように考えると90年代以降なぜ日本が苦戦を強いられ続けているのか、日本のアフリカ進出が遅れたことが何故問題なのかがわかる。

従来の援助政策の多くは途上国に”民主主義化”を迫るものだったが、中国はそもそも自国が民主主義ではない上に自国の体制を他国に押し付けることもない。2000年代以降中国からアフリカへの輸出量はめざましく伸び続け、アフリカ国内のインフラ、医療、食料、衣類を支え人々の生活を豊かにする。BOPは貧しい国の需要を満たすことで自国の利益を上げることと密接な関係にある。

アフリカの割高な人件費について。一言で書けばそもそも食料を自給できていない点に尽きる。大陸の60%以上が砂漠〜乾燥地帯であるという気候的な特徴に加え、人間居住地が分散しているために物流インフラが整備されておらず肥料を手にれにくい、産業が未成熟なため自国で開発技術を持たない、効率的な耕作のノウハウが伝達されず従来的な非効率な耕作に頼ってしまう、などの問題が重なっている。自国で供給ができない以上は食料を輸入に依存せざるを得ず、輸入である以上は食料は割高になる。そしてそれはそのまま高額な人件費に跳ね返る。

人件費が高額であるということは労働人口をそのまま労働力として活用することが困難であるということでもある。かつての日本も、中国も、東南アジアのほとんどの国は、安い人件費と高い労働力人口(いわゆる人口ボーナス)によってテイク・オフしてきた。人件費が高い以上は外国企業がアフリカに工場を展開してもアフリカ人を雇用することには及び腰になるし、産業は育たず人々は非効率的で利益率の低い耕作に依存せざるを得ない。おまけにアフリカの人口は増加し続けており、食料の流入が絶たれれば即死に繋がる都市部では不安が蔓延している。海賊国家で知られるソマリアのように未だ貧しく無政府状態にある国も存在する。

アフリカの多くの国では歳入を労働力ではなく資源に依存していることもあり、独裁的で不安定な政情で、国内の企業を自政府が支援することが困難な状態にあったが、近年では他国の企業の投資とアフリカ展開により経済成長率を猛烈に押し上げている。投資されるということはそれだけ重要な国だからであり、その重要性は資源の豊富さにある。取り分けレアメタルは今や生活インフラの一つであるハイテク機器には必要不可欠であるし、近年では巨大な天然ガスのガス田が発見されている。

猪木武徳『経済学に何ができるか:文明社会の制度的枠組み』

経済学に何ができるか - 文明社会の制度的枠組み (中公新書)経済学に何ができるか - 文明社会の制度的枠組み (中公新書)
猪木 武徳

中央公論新社 2012-10-24
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いくつかのテーマを定めて経済学について書いてあって面白かった。特に引用元が明記されていない著者が勝手に言ってるだけなのかよくわからない謎の理論が連発されるあたりもよかった。

経済理論というと現実の経済とは離れた場所で展開されることが多い印象があるけど、政治政策に近い地点から書かれたエッセイ集という感じで軽く読めてよい。引用にヒュームやスミス、アリストテレスといったかなり古い人物ばかりが出てくるのは、近年の経済学において人間の理解や幸福の解釈などが流行らなかった所以なのか。

著者が海外院出だからかあまり日本語っぽくない表現も多い点なども珍しくて面白かった。

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